●ひなびた日記/03年7月前半●


(7月2日〜7月17日)

 7月日記
7月2日 「近視の効用」 7月19日 「脱走!!」
7月4日 「安吾と宏」 7月22日 「ザ・プロレス」
7月9日 「一面の枯れたヒマワリ」 7月23日 「あくび指南」
7月11日 「完走」 7月24日 「新装開店!」
7月12日 「マヤの一生」 7月25日 「君の名は」
7月13日 「バカのうた」 7月26日 「今日のお客さま」
7月14日 「長いものに巻かれろ!」 7月27日 「おねだりバレリーナ」
7月15日 「ハシゴ」 7月28日 「共鳴」
7月16日 「デジャビュ」 7月29日 「おばあちゃん」
7月17日 「伴走雀」 7月31日 「蝶を捕る」


7月後半(7/19〜7/31)の日記へ

03/07/17「伴走雀」


 本日の登場人物


  スー  たい  ユキ



出勤途中、道端で地面をついばんでいた雀を追いこした。
すると雀は、ちょんちょん、と地べたを跳ねながらついてきて、
しばらくふたりで伴走する形となった。
最初はその可愛らしさに微笑んだものの、どこまでもついてきそうな雰囲気に、
もしや羽でも折れているのかと心配になった。
もっとよく見ようと足を止めると、雀は、ついとこちらを見上げ、
パッと飛び立った。
一体あれは何だったのだろう。



顔に似合わず、スーちゃんは実によく食べてくれるのでうれしい。
そして、スーちゃんは食べるのも、誰よりも早い。
今日の食欲はさらに飛ばしていた。

いつも男の子たち並みの大盛にしているのだが、
皆がまだ半分も食べ終わらないうちに自分の分をぺろりとたいらげ、
隣のたいちゃんのお皿にいく。
スーちゃんが何をしても愛しくてならないたいちゃんは、
スーちゃんの後ろにじっとひかえて、スーちゃんが食べ終わるのを待っている。

しょうがないので、スーちゃんにさらにひとつ、小さめの缶を開けた。
こんなに食べてもスリムなスー。ダイエットなど無縁である。

そして今朝、ユキはとうとう一言も威嚇しなかった!



03/07/16「デジャビュ」


 本日の登場人物


  あおぞら 



ドラマの話。
夕方、遅い昼食をとった定食屋さんの片隅に、小さなテレビが点いていた。
画面の中では、ちょうどオザケンの元カノである女優さんが「あなたのせいで○○さんが刺されたのよ!」と電話で怒鳴っているところだった。「刺された」という刑事役の織田裕二が電話を代わり、「死ぬところだったんスよ。なんで情報をこっちにおろしてくれないんスか!」と憤っていた。
電話の向こうで、ギバちゃんは言った。「・・・俺の責任だ」
私は次の言葉を祈るような気持ちで待った。今か今かと、待った。
ほんのひとかけらの、相手を思いやる言葉さえあれば、
これほど苦しまずにすんだものを・・・。
だが、ついにそれは一度も聞かれることはなかった。

「我々としては、事態を非常に重く見ている」とかなんとか、低く言葉を続けるギバちゃんに、次に電話を代わった署長らしきポジションのおじさんが「私の部下の命をなんだと思ってるんだッ」と叫んで、叩きつけるように電話を切った。

まもなくエンディングテーマが流れ、結局あらすじはほとんどわからなかったが、5分足らずの短いあいだ、私はテレビに釘付けになっていた。そればかりか、しばし、口を開けたまま画面に見入っていたようだ。周りの奇異な視線を紛らわすべく、残りのご飯を急いでかき込みながら私は考えていた。
責任とはいったい何だろうか?



あおぞら、2回目のフィラリアの投薬、無事終了。きっちり3週間ごとに飲ませなくてはならないため、手帳はもとより家じゅう全てのカレンダーに赤丸をつけて忘れないよう気をつけていた。飲ませてしばらく様子を見たが、別段変わった様子もなく、まずは一安心。

今やっている雑誌が無事校了したら、検診も兼ねて、また病院につれていかなくては。順調に回復しているようでうれしい。



03/07/15「ハシゴ」


 本日の登場人物


  トモロウ



前の晩スケジュールの都合で、突然、有給休暇が降ってわいた。

このところなぜか絶好調の私は、眠るのが惜しいほど。
このまま、どこまでも行けそうな気がしてくるから恐ろしい。
一葉講義の刺激のせいか。

そんなわけで、今日の休暇は映画のハシゴと速攻で決まる。
新宿で「パイラン」渋谷で「ヤマムラアニメーション図鑑」(「頭山」含む)。

長い時間がかかったけれど、いま間違いなく、
自分の生活を取り戻せたと実感する。
めちゃくちゃになった生活の残骸を、ひとつひとつ拾い集め立て直した。
この調子で、今年前半の最悪な遅れを取り戻すことを誓う。



今、かなりの量の文章をせっせと入力し終えて一息ついているところに、トモロウがひらりと現われて、「ノオォォォォォ〜〜〜ッッッ」と叫ぶまもなく、その大半を削除してしまった。泣く。書き直しってかい。くそー、急いでるのに〜



03/07/14「長いものに巻かれろ!」


 本日の登場人物


  あおぞら 



雨上がりの夜、散歩に出かけた。
散歩の好きなあおぞらは、私が戸締まりをしている間、玄関先や道端の草に
顔を突っ込んで、はしゃぐ。

歩き始めてすぐ、あおぞらの様子がおかしいことに気づいた。
左後ろ足をちょっと引きずるようにして、なんだかガニ股気味である。
この間も筋肉注射で、次の日少し腫れてしまったのが、確かこちらの足だった。

大丈夫かなと、ちらちら後ろ足を振り返りながら進む。
あおぞらは、きょとんとして笑顔で見上げている。
足が痛むわけではないらしい。

何だったんだろうと訝りながら、とりあえず先へ行こうとすると、
突然、あおぞらが後ろ足をしきりになめ出した。

??? すぐ街灯の下に連れて行って、よくよく見ると、
細い紐のようなものがぐるぐる足に巻き付いていた。
歩きにくいわけである。

しかし、顔を近づけるまでもなく、それが紐でないことはわかっていた。
一瞬私の脳裏を掠めたのは、サナダ虫であった。
しげしげとお尻とそいつを見比べたが、どうも違うようだ。じゃ何だ?

うんちバッグから新聞紙を取り出して、とにかくそいつをひっぺがす。
ねばねばして、なかなか取れない。
無理やり取ったら、三分割にちぎれてしまった。

三分の一の長さになったものを灯りの下でじっと見る。
こ、これは・・・
あいつだッッッッッ!!!!
(このサイトはとても興味深いので、長いものがダメじゃない人は、他のページも見てみてね)

犬猫も好きだが、こういうものも、だあああい好き。
子供の時分、ミミズや蓑虫が可愛いペットだった私である。
機会があれば、将来ぜひとも飼ってみたい。
三分の一になったこの子は、まだ見たことがないという父ちゃんのために
大事に包んで、持って帰る。



某事務所で打ち合わせ中のこと。
「大杉栄の殺された関東大震災の年」という記述を見ていた編集のYさんが
「関東大震災のどさくさで大杉栄は殺されたんだろ」と呟いた。

事実がねじ曲げられていく過程の一端を垣間見る思いだった。
おそらくこれを書いた人は、全く無意識だったのではないか。
しかし、この順序のねじれは、明らかに致命的なものである。

これは、言葉を扱う仕事の人間にとって、相当重要かつ不可欠な感覚である。
しかし、羽毛が一瞬、頬に触れるか触れないかのような、
きわめて微妙なものでもある。
残念ながら、これを持っている人、意識して持ち続けようとする人は、
驚くほど少ない。
研ぎすまされた正確さとは、このようなことを指すのではないか。



03/07/13「バカのうた」


 本日の登場人物


  ユキ 



今朝の朝日新聞は凄かった。
何がといって、社会面左上の四コマ漫画「ののちゃん」だ。

1コマ目。お兄ちゃんがヘッドホンでステレオを聴いている。歌が小さく流れている。
2コマ目。「こわれてるのかなあ」と言いながら音量を上げる。歌は続く。
3コマ目。額に怒りマークをつけた母親に「バカン」と思いっきり殴られている。ヘッドホンが吹っ飛ぶ。
4コマ目。「表通りまで聞こえてるワ、アホッ」ハアハア息を切らして駆けつけて来たらしい母親。ガンガンに鳴り響くステレオ。

問題はその歌詞。
1コマ目「中学まではまともだった」2コマ目「まともだったのに〜」
あれ、この歌、知ってる? 私は不思議な感覚にとらわれる。
忘れ去られた記憶が、向こうの方からバッファローの群れのごとく、砂煙をたてて走ってくる。なんだっけ、なんだっけ? もう少しで思い出す…

4コマ目「さんざんムリしてバカになった バカになったのにィ
あッ、あッ、あ〜〜〜〜〜ッッッッ! ピーズじゃんッッッッッ!!これ!!
(註:Bではなく、Pです。)
そう、ハルさん率いる永遠のパンクバンド、ピーズの「バカのうた」じゃあ、あ〜りませんか! 名曲中の名曲、これぞ、ぽこちんロックの真髄!!

こ、こんなところで、2003年の今、ピーズに再会しようとはッッッッ(感涙)
しかし、あの年代でピーズを知っている・・・いしいひさいち、恐るべし!

(後日談)
と、思っていたら、なんとピーズは去年夏から5年ぶりに活動再開してんじゃん! すでに新譜出てるし。うそっ!あのアビさんまで、社会人やりながら週末だけ活動って…マジでェ?! 喜!狂!涙!! 快哉を叫ぶ。



ユキが最近、朝食を皆といっしょに食べるようになって、私はつい、ほくほくしてしまう。もちろん、お皿の位置はまだ、皆から猫一匹分ほど離れたところだけれど、これはすごい、目を見張る進歩だ。

食べ終わっても、すぐに二階に上がることをせず、しばらく部屋をうろうろしている。そして、ここでまた私は助けられてしまうのだが、この時、いくらユキが不機嫌に唸ろうと威嚇しようと、どの子もじっとおとなしく、ただユキを見ているだけなのである。
あのたいちゃんが追いかけないのだ。あのルノがやり返さないのだ。そして、これまでずっとヒステリックに喚き続けていたユキも、明らかに変化が見られる。

もしかして、全員・・・天才? なんて、おりこうなんだろう。
うれしさのあまり、飼い主はバカ全開で、やにさがってしまう。

唯一、若さゆえ辛抱しきれぬ公平少年がフライングしてしまうけれど、それもあまりしつこくはしないので、大して問題ではない。
なので、最近のユキは、この食後の威嚇すら、だいぶ治まってきているのだ。 
すごい〜すごい〜
母ちゃんはすることがない。ひとり、ひげダンスでも踊ってみるか。



03/07/12「マヤの一生」


 本日の登場人物


  あおぞら  ビルマ  ルノ



あおぞらと散歩に行くと、いろんな人に声をかけられる。
先日も、ウオーキングの途中らしい年配のご夫婦に「ま〜あ、ちゃかちゃか、ちゃかちゃか、嬉しそうに歩くのねえ!」「きっと散歩が大好きなんだな。うん、いい顔だ」と言われ、一体どんな顔をしているのだろうと、あおぞらの顔を覗き込むと、あおぞらは「でへへ」と笑って見上げるのだった。

今日のおばあさんは、前にも一度軽く立ち話をしたことがある人だった。
その日もやはりハイキングのような軽装で、散歩がてら、
この辺の旧跡めぐりでもしているのだろうか。
その人がしみじみとした口調で、あおぞらにこう言ったのだ。
「あなたは本当に幸せだわねえ」
私とあおぞらは「でへへ」と顔を見合わせた。

すると彼女は「昔の犬は、戦争で皆殺されちゃったのよ」と続けた。
八王子の実家にいたシロという犬は、戦争中にお上の命令で殺されてしまったのだそうだ。その時の銃声を、彼女は今でも胸の痛みとともに、はっきりと覚えていると言った。「あなたなんか若くて、きっと知らないでしょうけど」

いいえ。私は知っていた。『かわいそうなぞう』はもとより、椋鳩十の『
マヤの一生』は、子供のころ『シートン動物記』とともに何度読み返したかしれない。
今も表紙のマヤの絵を思い浮かべただけで、瞬間的に泣いてしまう。
最近、新版が出ているから、もし読んだことがない人がいたら、
おせっかいながら、ぜひ読んでみてほしいと願う。

「今でも、飼い主に捨てられたり、保健所で苦しい思いをして殺されている犬や猫がたくさんいるんですよ」
本当はそのおばあさんに、そう言いたかった。
でも、おばあさんはすでに涙ぐんでいたので、私は何も言えなかった。

「正義の戦争」など、あるわけがない。



この時期、私のお気に入りは「タピオカ入りココナッツミルク」。
ここ二、三年の定番なのだ。
「やれやれ、今日もよく働いたことよ」そう思いながら、
一日の楽しみであるそのデザートを、まさに食そうとしているところだった。

「なに? なに? なに?」食いしん坊のビルマに嗅ぎ付けられてしまった!
すでに心奪われているビルマは、寄り目の顔をぐいぐい近づけ、
口はぎゅうと前に突き出され、鼻の穴はピクピク膨らんで、
はっきり言って相当に変な顔なので、笑い転げてしまった。

基本的にわが家の方針では、甘いものは食べさせない。
けど、今日はその迫力に降参し、ちょっぴり蓋をなめさせる。
ふと見ると、やや下がったところに、ルノがきちんと手を揃え、
ちんまりと控えている。もちろん、期待にきらきらと輝く目の中には星。
・・・負けました。あまりにも、いじらしい。

結局みんなでちょびっとずつ、ちびちびと食べましたとさ。



03/07/11「完走」


 本日の登場人物


  クルリ 



樋口一葉の講義も今日が最終日。
たった四回とはいえ、皆勤することができて、とてもうれしい。
最初は、半分出席できればいいか、と思っていたが、どんどん欲が出てきた。
仕事でどうしても無理かと思われた時も、
アクロバットのようなやりくりで、クリアした。
当初の予想を上回る、刺激的で充実した時間だった。
日々の忙しさに紛れ、忘れかけていた感覚をこの手に取り戻す。



クルリは、ひとり静かに瞑想に耽りたい日と、
とにかくプロレスのお手合わせをしたくてたまらない日とが、
日替わりでやってくるらしい。

今日は瞑想の日、と決めている時は、
誰がどんなにふざけてきても、全く相手にしないが、
本日はプロレスの日であったようだ。

クルリが闘志に燃えている時は、背中の毛が山脈のように逆立つ。
クルリの粘り強さは随一である。決して諦めない。
あまりパンチは繰り出さないが、無言の迫力で押していく。
負けん気の強いトモロウでさえ、まいった〜と逃げ出していく。
気のやさしいクルリ君も、男でござる、な一瞬。



03/07/09「一面の枯れたヒマワリ」


 本日の登場人物


  トモロウ  ビルマ  たい



二週間ほど前、以前習っていた書道のK先生から、
墨絵の展覧会の案内状をもらっていた。
今回は平日のみの開催で、仕事の忙しい時期と重なっていたこともあり、
行けるかどうか危ぶまれたが、幸い、数時間うまく空けることができた。
最近ついてる私である。

K先生の作品はいつも素晴らしいので、ぜひ父ちゃんにも見せたく、
無理やり時間をつくってもらって待ち合わせる。

場所は築地。「へえ、こんなところに」と思うような
お茶屋さんの上にある、とても素敵なギャラリーだ。

今回のテーマはヒマワリ。
それもすでに枯れてしまったものだというから面白い。
十人十色というが、二十数名の思い思いの解釈やアプローチによる
個性的なヒマワリであふれていた。

K先生の大先生にあたるM先生の作品は、いつもモダンで洗練されている。
私はこの方の描く一連の仏様の顔が特に好きなのだが、
今回も、カンバスを用い、洋画を思わせるような斬新な構成のなかに、
凛としたヒマワリがすっくと立ち上がっていた。

会場には、K先生の書道の大先生であるU先生もいらして、緊張した。
大変に厳しい方だと伺っていたのだが、とても上品で小柄な老婦人で
二人して、しどろもどろの挨拶をする。
U先生の作品もまた墨色が深く、気迫の感じられるヒマワリだった。

けれども、私がいちばん心奪われ、その前に長く佇んだのは、
やはり私の先生である、K先生の前であった。
なんとまあ、大胆で情熱的なことか。
ヒマワリは確かに、もうすでに十分咲き終わり、
もはや朽ちていくばかりなのであるが、
その花は枯れてもなお、咲き続けることをやめなかった。

花というより、それは燃え立つ炎のようでもあり、
今まさに空に向かって羽ばたこうとする鳥のようでもあった。
画の中に、懐かしい先生の字で添えられた艶やかな詩は、
この絵のために書かれたものであるかのように見事に調和していた。

決して大きくはない私より、さらに小柄な先生は、
「なかなか墨の色が気に入らなくてねぇ」とコロコロ笑っていらっしゃる。
もうひとつ会心の出来のヒマワリは、個展のためにとってあるのだとか。
先生の才能と情熱はとどまるところを知らない。

K先生との出会いは、前に勤めていた事務所で、社員研修の一環として
書道の時間が月に二度ほどあったことに始まる。
そこで、お習字の面白さに開眼し、先生のお人柄に惚れ込んだ私が、
退社後も個人的にお稽古に通うようになったのだ。
今は諸々の事情で、お稽古をお休みしているが、
落ちついたら、いつかぜひ再開したいと思っている。

この先生については、忘れられない逸話がある。
事務所の社長と先生との出会いのエピソードだ。

もう、ずいぶん前のお正月。
中上健次が常連だったという喫茶店に、
素晴らしい書の掛け軸がかかっていた。
ちょうど、書道を習いたいと考えていた社長は、
「これを書いた人こそ、自分の探し求めていた師だ!」と衝撃を受ける。

おそらく、浮き世離れした仙人のような気難しい老人だと思われるが、
自分を弟子にとってくれるだろうか。
そう思いながら、コーヒーを運んできたウエイトレスに
この掛け軸を書いた人の名を尋ねた。

すると、その若い小柄な女の子は、澄ましてこう答えたのだ。
「わたくしです」
テーブルに着いていた者全員がひっくり返って驚いた。

私はいつもこの話を、突き抜けた痛快な爽やかさとともに思い出す。

若いころから、書道界でその才能を認められてきた先生だが、
その後、ボランティアにも精力をそそぎ、国際結婚でアメリカにしばらく
暮らした後、ご主人の仕事で日本に戻ってきてから、書道を本格的に再開。
ほかにも、墨絵や、最近では俳句にまで手を広げ、
いつも創作意欲を燃やしながら、決して奢りたかぶることはない、
私の最高の師のひとりなのである。



ここ数日、トモロウが続けて毛玉を吐いたので、
毛玉除去の薬ペトロモルトをなめさせた。
すると・・・いそいそとビルマ君がやってくる。顔が期待に輝いている。
ビルマはこの薬が大好きなのだ。おやつだと思っている節もあるようだ。

この薬は、以前ビルマがひどい便秘をした時に病院で出してもらったもの。
毛玉の排泄を促すので、整腸薬としてもいいらしい。
ビルマ君は、この薬のお味がいたくお気に召したようである。
その時は当然ビルマだけになめさせていたので、
そうした特別待遇もずいぶん気分がよかったらしい。

その後、トモロウが毛玉を吐きがちなので、
ちょうどいいとなめさせることにした。
ただ、この薬は便がやわらかくなることもあるので、
もともとお腹の弱いトモには、薬の按配がけっこう微妙。

ふと視線を感じて振り向くと・・・きら〜ん。
お約束、たいちゃんの目が鋭く光っている。
ビルマはたいちゃんの永遠のライバルであるようだ。
正真正銘、ほんとの兄弟であるはずなのだが、
だからこそ抜け駆けが許せないらしい。
ビルマ君だけ何かおいしいものをもらっているのではないか、
常に厳しいチェックが入る。

もっともこれには私もだいぶ責任があるので、
彼らが来た当初、ビルマ君がやはりすごい便秘で全然出ないものだから、
マーガリンをなめさせたり、必死でお腹マッサージをしたり、
彼につきっきりだったのだ。
当時のビルマは、超のつくビビル大魔王で、
触らせるのにも根気よくしなければならなかったから、ものすごく神経を使い、比較的すぐ馴れたたいちゃんが甘えてきても、
うっかり「後でね」とやってしまったのである。

まったく健康優良児のたいちゃんに比べ、
ビルマは最初、歯肉炎がひどくて固形が食べられなかったり、籠城したり、
うんこは出ないし、肝臓の数値は悪いし、ほんとに心配したのだったが、
これでは、たいちゃんが「ひいきされてる!」と思い込むのも無理はない。
猛省!

そして今日も、のしのしとチェックしにくる、かわいいたいちゃん。
けれども、たいちゃんが薬をなめることはない。
口元に近づけても、くんくんと匂いを嗅ぐだけで、絶対に口をつけない。
食いしんぼうのビルマに比べて、たいちゃんは食べ物にはとても慎重だ。
何から何まで対照的で、見ていて飽きることがない、かわいい兄弟たちである。

それにしてもビルマの便秘は、おそらく運動不足も
原因のひとつではないだろうか。やっぱりダイエットだなあ。



03/07/04「安吾と宏」


 本日の登場人物


  ビルマ 



所用のついでに、たまたま坂口安吾の原稿が展示されているのを見る機会があった。「もし一行デモけづるのなら、のせないで下さい」
原稿の最後に(坂口安吾・作家)と自ら記した後の欄外にそう書き入れていた。
40を過ぎた男の、子供っぽい真剣な口ぶりを好ましく思う。

その後、近くの本屋に立ち寄り、坂口安吾を探したが、角川文庫の「不連続殺人事件」と「肝臓先生」二冊しかないのに、少し驚いた。

隣の棚で、「神の肉体 清水宏」を発見し、今度こそ本当に、うおおっと低く叫んでしまったのだが、よく見ると「清水宏保」だった。
…な、なあんだ。ああ驚いた。

清水宏保氏とは、むろんあの超人的なスピードスケートのメダリスト。
私が勘違いした清水宏氏とは、えーと、えーと、なんていうか、
正気を悪魔に売って役者魂を手に入れたかのような、
無論これは私の想像なのだが、とにかくそうした凄まじい役者さんである。
自他ともに認める汗かき。

結論。今日も楽しい私の一日。



ビルマ君がうちに来た時は、なんとまあハンサムな子かと驚いた。
さすがに痩せてはいたけれど、堂々たる体躯に、中途半端な長さのしっぽも珍しく、なにより足がすらりと長くて、ほんとに惚れ惚れしたものだ。

月日の経つのは早い。
ふと、気づいた。ビルマって「パタリロ」に似てないか?
なんだか顔が大福状に垂れている気がするし、床につきそうなお腹は、足の長さをほとんど打ち消してしまっている。

先日、ワクチン接種の際に、「生まれてからずっとケージに閉じ込められていたそうで、いまだにこの子だけジャンプするところを見たことがないんです」と訴えると、「こんなに体が重くちゃ、飛びたくても飛べないでしょう」と笑われてしまった。え? ・・・そういうこと?
もちろん、ハンサムに変わりはないものの、う〜ん、一体いつのまに・・・

最近、事あるごとに、ビルマ君を抱き上げては椅子の上に乗せる、という
実に地道な試みをしている。
上下という動線を、彼にぜひ体験してもらいたいのである。ほんの少し高い所に上がっただけで世界がどれほど違って見えるか、何とかして伝えたいのである。
もっとも本人は、ちょっと迷惑そうにしてすぐ降りてしまうのだが。



03/07/02「近視の効用」


 本日の登場人物


  くま子  スー  ビルマ  ルノ



私はものすごく目が悪い。眼精疲労を少しでも軽減すべく、
最近はできるだけコンタクトではなく眼鏡で過ごすようにしているが、
その眼鏡は何年も前に、家の中用に作ったもので、度数を緩めにしてあるから、
それをかけて外に出ると、ちょっと見えにくいことがある。

あおぞらの散歩中、野良の通り道になっているらしいお宅の塀の上に、
灰色がかった、まだら模様の猫がいた。
「変わった柄だなあ」と、顔を近づけてよく見ようとすると、
庭の植木に水をやっている、おじさんのごま塩頭だった。
うわっと言いそうになるほど驚いた。
最近のなかで一、二位を争うびっくりだった。

個人的な意見だが、目は悪いほうが、
世の中がより面白く見えるのではないだろうか。私の毎日は楽しい。



なにわの美人コンビは本当に仲がよい。甘えん坊のスーちゃんは、こんなに大きくなった今でも、盛大にゴロゴロ言いながら「おかん」くま子のおっぱいをちゅぱちゅぱする。この間は豊満ビルマ君のおっぱいまでちゅぱちゅぱしていた。

彼女達は男の子たちとも仲がよい。スーちゃんは相変わらずモテモテだし、くま子はせっせと皆の世話を焼いている。
とくに最近では、ビルマ君が気になるらしく、何かと世話をしているが、ビルマ君があんまりぼさっとしていると、ビシバシ手も出ているようだ。
その様子に台詞をあてるならば「んもう、ちゃっちゃと起きて早う学校行きぃや!」と大きな息子を叱り飛ばす「浪花のおかん」そのものなので笑ってしまう。

くま子に刺激されてか、最近ではルノまで母性本能が復活し、これまた甲斐がいしく女の子たちの面倒をみている。

わが家は、新しい子が加わるたびに、これまでのよい関係が、さらによい方向に発展していくような気がする。皆、偉いぞ。そして、母ちゃんは楽だ〜。




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6月15日 
「雨に想う/一周年記念日に」
6月22日 「への字ぐち」
6月17日 「かね子さんの空」 6月23日 「粋と鍵」
6月18日 「即興」 6月25日 「受難のち発見」
6月20日
「the last woman of old Japan」
6月30日 「頭、隠して」





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