さんま君りんごちゃん観察日記
page4(9/12〜14)


page3へ
9月14日「気配---<後日談>


昨日のお届けで気が抜けたのか、今日はもう体が動かない。嬉しさと寂しさとが、もこもこ発酵して膨らんでいく。気持ちが体をはるかにはみだしてしまっている。

わが家にはまだ九匹も猫がいるのに、二匹いなくなっただけで、こんなにも、ぽっかりと寂しくなるものかと、改めてびっくりする。朝、ご飯をついうっかり11のお皿に取り分けてしまう。猫たちと部屋にいても、隣の部屋に、ふたりの気配がしないので、驚くほど静かに感じる。

玄関を入った正面がさんま君りんごちゃんの部屋で、帰宅するといつもさんま君が、ラティス越しに「んにゃにゃ!(おかえり!)」と挨拶してくれたのに、もうその声は聞けない。癖でつい、部屋をのぞいてふたりがどこにいるか探してしまう。そのたびに「ああ、そうだった」と苦笑い。そうやって少しずつ、ふたりのいない生活に馴れていくのだ。
ふたりでイタズラ中。

一日じゅう「さんま君たち、今頃どうしてるかなー」と猫たちに尋ねてしまう。里親さんは昨日も今日も、メールで様子を知らせてくださった。それを読むのは本当に楽しい。
二時間ほどお邪魔しているうちに、すでにふたりは探検を済ませ、すっかり自分の家のようにくつろいでいたのに、私達が帰った後は、さすがにちょっとおこもりしたようだが、今日のメールでは、ずいぶん馴れてきているようだ。ふたりとも食欲もあるようだし、もう何の心配もない。どんどん新しいお家の子になってきている。

ふたりは早くもブラッシングやマッサージをしてもらって、ゴロゴロ言っているそうだ。すごい!!! さんま君改めサム君など、里親さんの行くところ行くところ、興味を持ってついてまわっているらしい。里親さんは「歩きにくいけど、かわいい」とおっしゃってくれている。本当に素晴らしいご縁だったとつくづく思う。

預かりを決心した時、ふたりを幸せにする自信なんてこれっぽっちもなかった。それどころか、絶えず死の影が背中に張り付いて、薄氷を踏む思いだった。人を見る目なんかないし、いつも馬鹿な目にばっかり遭う。でもとりあえず前に進もう、後のことはそれから考えよう、そう思っていた。
でもりんごちゃんが大丈夫だと言ってくれた。「私は私の運命がどうなるか知っているの」と彼女は言っていた。そして、わざわざ我が家までお見合いに来てくださった里親さんをひと目見て、わが家の猫たちは「この人だったら大丈夫」と太鼓判を押してくれたのだ。猫たちを信じて勇気を出した。そうしたら、最高のご縁が実った! 
ほんとに幸せになったんだね、ふたりとも。
新しいお名前、サム君、リリーちゃんとして、これからも元気で、
いっぱいいっぱい、可愛がってもらってね。
バイバイ、愛してるよ。
ずっと忘れない。あなたたちのことも、温かい応援のことも。


9月13日「お引っ越し」


何度も持って行くもののチェックをする。お薬、ワクチンの証明書、検査結果の書類、ふたりの好きなかにかま、今まで食べていたフード、トイレの砂を少しetc...
最後の夜だから、眠るのが惜しいけれど、明日ふたりを抱えて電車で行くのだから、しっかり寝ておかなくてはならない。さんま君がずっと添い寝をしてくれた。
りんごちゃんは時々匂いチェックしながら、髪の毛をグルーミングしてくれる。
最後に、とうとう
りんごちゃんが、私の腕と脇腹のあいだに入ってきて、目をつぶりながら、ずっとりんごちゃんの長いしっぽを触っていたのに、朝起きてみると、さんま君とチェンジしていて、りんごちゃんは机の上からじいっと私の寝顔を見ていた。

他の子たちのご飯の用意をして、犬の散歩に行って、飛んで帰ってくる。あっというまに時間がたつ。さりげなくキャリーの準備を始める。なるべく驚かさないよう、怖がらせないよう、手早くしなければならない。ふたりは何の疑いもなく、昨日と同じようにくつろいでいる。そこに何げなく近づいて、さっとキャリーに入れるのだけど、毎回この作業は罪悪感で心がちくちくする。でも、次の幸せにたどり着くには、通らねばならない道なのだ。さんま君がさっと警戒したけど、すぐにふたりをキャリーに入れることに成功。何だか、ふがいない私を助けてもらってすみません、という気がした。
駅につくまで、けっこうふたりとも大きな声で鳴いた。自分の運命が今また大きく変わろうとしていることを敏感に察知したのだろう。胸が痛むけど、幸せになれるんだから頑張ろう!と自分にもふたりにも言い聞かせ、「しゃんま〜しゃんま〜りんごちゃん♪」と道中、歌いながら歩く。人が振り返るけど、気にしてはいられない。








カメラを向けるとそそくさと席を立つ
写真ぎらいの りんごちゃん。 

今日はカンカン照りの真夏日。ふたりの体調が心配で、気が気でなかった。大阪に迎えに行った日が思いだされてならず、実はこの時点ですでに、じんわり涙が浮かんでしまった私なのだった。
途中乗り換えの駅で、ご近所の猫仲間・Kさんと合流。彼女はこれまで何度も里子を出された経験があるので、今回無理を言って一緒に来て頂いたのだ。これまではメールや電話のやりとりばかりで、お会いするのは初めてだったのだが、こんなきれいな人が、こんなに気さくでいいんだろうか、と思うくらい、とても親身になってフォローして頂いた。すでに飽和量を超え、お馬鹿に拍車がかかっている私は、どれだけ心強かったことだろう。心から感謝しています。

里親さんに最寄りの駅まで迎えに来て頂いて、三人がかりでキャリーを運びながら、里親さん宅に無事到着。
まだ新しいマンションで周りもとても静か。それだけでもすでに申し分のない理想的な環境なのに、案内されて一歩お部屋に入ったとたん、私はすっかり感激して胸がいっぱいになってしまった。
初めて猫たちを迎え入れるために、こまごまとしたものを買い揃えてくださっただけでなく、少しでも猫たちが快適に暮らせるようにと、随所に里親さんのお心配りが感じられる部屋だったからだ。
里親さん宅にて。鏡の前がお気に入り。

危険なもの、壊れやすいものは、すべてきちんと片づけられ、猫たちが登れるように、わざとタンスの上に段差を作ってくださったり、台所に飛び込んでくると危険だからと、入口に小型犬用の柵を取り付けてくださったり。
(もちろん、やろうと思えば飛び越えてしまうかもしれないが、ワンクッションあるのとないのとではずいぶん違うし、いちいち開け閉めして出入りするのは、どれほど煩わしいことかと思うと、本当に里親さんのお心づかいをありがたく感じる)。
ケージの中にはふかふかのクッション、カーペットタイプの爪研ぎには、かわいいにゃんこの顔が赤く刺繍されていた・・・。
本棚にはさりげなく、猫の飼い方の本があり、事前にいろいろ勉強されたそうだ。
ふたりを迎え入れてくださるために、どれほど心を砕き、時間を割いてくださったか、どれだけ感謝の言葉を並べても、とても足りないくらいです。
ダイニングテーブルの下でさっそく香箱を作る。

二時間ほどお邪魔したのだが、ふたりは早くも探検も済ませ、一時間後には、まるで最初からこの家の子だったかのようにくつろぎ始めた。
ケージから出した直後から、比較的落ち着いていたので、それほど心配もなかったのだが、ふたりとも実におりこうに、さっそく新しいトイレを使い、さんま君はなんと立派なウンPまでしてくれたので、心底安心した。このぶんだと、驚くほど早く、新しいお家に馴染んでくれることだろう。本当によかった!

何とも笑えるエピソードをひとつ。探検に夢中になっていたさんま君がふと気づくと、りんごちゃんの姿が見えない。実はりんごちゃんは、すでにダイニングテーブルの下をお気に入りの場所と決めたようで、さっそく香箱を作ってくつろいでいたのだが(写真参照)、あせったさんま君は、急に心細くなったのか、りんごちゃんを探して鳴き始めた。
いくら人間が「しゃんま君、大丈夫だよ」「りんごちゃんはここだよ」と言っても当のりんごちゃんが澄まして黙っているものだから、いよいよ不安げにさんま君は呼び続ける。ようやくりんごちゃんを発見して、ああやれやれ、という実に見事に安堵した顔で、一緒にテーブルの下にもぐりこむ。本当に仲良しなんだから(笑)。離ればなれにならなくて、本当によかったね。

里親さんは、笑顔が輝いていて、本当にうれしそうだった。お見合いに来てくださった日の晩は、猫たちとの生活を夢にまで見られたそうである。今日という日をどれだけ待ち望んでいてくださったか、ありがたくて嬉しくて、またまた泣きそうになってしまう。
でも、泣くのは里親さんに対してとても失礼なことだから、涙がこぼれないよう、頑張った。ご一緒してくださったKさんもふたりのことを「かわいい、かわいい」と言ってくれて、とてもうれしかった。Kさんはふたりに猫草の種をお土産に持って来てくださった。お二人のおかげで、とても楽しくお別れすることができた。なんだか昔からの友人の家に遊びに行ったみたいだった。
里親さんにもKさんにも、心から感謝しています。本当にありがとうございました。











この日、帰り道に見つけた不思議な看板。
(道端に停めてあった自転車の前カゴについてた)
なんだかいいことがありそうな気がして・・・

里親募集を始めた時、当初はオフラインで探すつもりでした。でも、以前ネットで嫌な思いをした事情を知っている方から、「いつか全部忘れられるほど、ステキな出会いがきっとあるはず」と励ましていただいて、初めて吹っ切ることができました。
おかげさまで、こんなに早く、これ以上はないと思える素晴らしいご縁に恵まれました。さんま君りんごちゃんを応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。まだお試し期間中ですが、もうほぼ正式決定といっていいくらい、うまくいきそうな気がしています。
ふたりは新しい名前サム君リリーちゃん(元の名前の感じを生かしてつけてくださいました)として、これから幸せな新生活に入ります。
本当に本当に、今までありがとうございました!


9月12日「前夜祭---旅立ちを前に


いよいよ明日ふたりが行ってしまう。だから、ちょっと日付をワープ。

着々と近づくお別れの時。それなのに、もう毎日毎日忙しくて鼻血が出そう。断っても断っても仕事が入る。これはフリーランスの私にしてみれば、今年前半の空白分をフル稼動で穴埋めしなくてはならないから、本当にありがたいことだと思う。

けど、本音をいえば、さんま君りんごちゃんともっと一緒の時間を過ごしたかった。それなのに連日、残業で帰宅が10時を回る。まあ、昔の午前様に比べたらずいぶんとマシには違いなく、月に一度の雑誌の校了中の間だけのことだけど、今月はさすがにうらめしく、仕事中も時計ばかり気になった。

月に一度といえば、昨日は生理痛がひどくて、仕事中久々に何度も意識が遠くなった。あまりに辛くて何もできず、いつもより数時間も早い1時半ぐらいには寝てしまった。これは私の体内時計で言えば、夜の7時半ぐらいに該当する。少し寝たお陰で、今日はずいぶん馬力が違ったから、ほんとにもっと寝るようにしなくては、と反省だけはしてみるのだが。
実をいうと明日も仕事だったのだけど、さすがに断ったのだった。「猫のお届けがあるので」と正直に理由を話すと、ずいぶん笑われたけど、快く休みをくれた。いい職場でありがたいです。
さよなら。ふたりとも大好きだよ・・・

里親さんから頂いたメールを何度も読み返した。初めて猫を飼うというその方は、もうあれこれ買い揃えて、着々とふたりを迎え入れる準備を整えてくださっている。本当にありがたいことである。なんて不思議な、なんて運命的な出会い。さんま君りんごちゃんはきっと幸せになれるだろう。改めて、そう確信する。

これ以上はないと思える素晴らしいご縁が、突然降ってわいた驚きと喜び。でも振り返れば、私はふたりにほとんど何も、それらしいことをしてあげられなかった。精一杯やったけど、もっとスタミナが欲しいと思ったのも事実。8月の後半から9月の前半にかけて、たぶん今年一、二位を争う過密スケジュールだった。ハズせない大事な締切りが目白押しだった。かなり、まなじりが吊り上がっていたことだろう。

そんな私をふたりはとても辛抱強く支えてくれた。ふたりはいつも疲れてる私にやさしく甘えてくれたし、締切りや他の子のお世話に追われている時は、自分達の部屋で、仲良く遊んだり食べたり眠ったりしていた。助けられた、と思う。
さんま君はあれから一度病院に行ったけど(後ほど、日記に書きますね)、ふたりとも体調は概ね良好で、りんごちゃんのプチハゲもさんま君の目の不調も、いつのまにかよくなっていた。暑い夏の日に、おっかなびっくり大阪から連れ帰った時のことが、もう遥か昔のような気がしてしまう。
いい子たちだった。本当に素直でかわいかった。神様のお使い猫のように、どこか神秘的なところもあった。私にたくさんのものを与えてくれて、そして明日新しいお家に旅立って行く。今日はこれからずっとふたりの傍にいるつもりです。たくさん遊んで、いっぱい写真も撮って、そして今日は一緒に寝ます。

ありがとうね、さんま君りんごちゃん。短い間だったけど。
幸せにね。大好きだよ。・・・なんだか胸がいっぱいです。

里親さん、そしてふたりの旅立ちに立ち会ってくださる猫仲間(先輩)のKさん。
明日はどうぞよろしくお願いします。


page3へ


募集ページに戻る