トモロウが末っ子になったわけ

その10 追記:もうひとつの命の話

ちょうどその頃、ネット上の多くのSOSの中で気になる子がいました。私の好きな茶トラ君で、名前をノラ吉くんといいました。山形県で交通事故に遭ったところを中学生が保護したのですが、未成年者の事もあり、代理の方が緊急のSOSをたちあげていたものです。その方は、私がちょくちょくのぞかせて頂いている、とても心あたたまる猫HPを開いているTさんでした。


Tさんは、家族の反対にあっている中学生を励まし、ネットで呼びかけ、なんとかノラ吉くんを助けようと懸命に力を尽くされていました。しかし、なかなか連絡がとれないまま、やっと話ができた時にはすでにノラ吉くんは保護主さんによって動物保護管理センターに連れて行かれた後でした。その数日前に、別の緊急SOSを主催されている方から支援金が送られ、確かに届いたと確認されたばかりだというのにです。

それでも最後の望みをつなぎ、Tさんは保健所に電話をしました。しかし無情にも、ノラ吉くんは翌日「殺処分」されていました。「処分」の日は8月2日、黒猫さんと連絡をとりあって、トモロウを保健所から出してもらった日です。


緊急SOSの終了とともに、経過を知ったのは8月6日でした。トモロウがわが家の末っ子としてすっかり馴染み、私は様々な不思議な思いに打たれながら、どのようにトモロウのページを作るかあれこれ考えているところでした。私は久しぶりに、おいおい泣けてしまい、しばらく何も手につきませんでした。

交通事故は後々どのような障害が出るかわからず、長期の治療が必要です。「ケガのこともあるので、なるべく里親は山形県内か、その近くで探したい」という保護主さんの希望が書かれていたと記憶しています。だから私にできることとして、ほんのわずかでも治療費のたしにしてもらおうと、カンパを考えていた矢先のことでした。


Tさんは以前、愛猫を亡くした時、その子に会いたい一心で里親募集のサイトを訪れるようになったそうです。そして、いろいろな現実を知り、何かできることはないだろうかと考え、里親さん探しのページを作られたのだと書いておられました。Tさんのやさしさが、このような形で踏みにじられてしまったことが、悔しく残念でなりません。
また、掲示板などで毎日多くの方がノラ吉くんの死を悼みました。こんなにも多くの善意が注がれていたにもかかわらず、ノラ吉くんは殺されてしまいました。「無知」と「無理解」は時に人をこれほど鈍感にするのだと思います。
そしてTさんも皆さんも一様に「ノラ吉くんは、まだまだたくさんいる」とおっしゃっているのが強く心に残りました。


この追記を書くにあたり、これはノラ吉くんだけがことさら不幸であったということでなく、あちこちの保健所、センターで実際によくある話だということをぜひ付け加えてくださいというご要望がTさんのほうからありました。
また、保護すること、一つの命を助けるということは本当に大変だということも。でも「何とか助けたい!どんなことをしても!」という思いさえあれば、きっと助けることができる。だから、あなたが手にした命に、どうか最後まで責任を持ってください。いま精一杯生きているどこかのノラ吉くんのために…これは、Tさんから頂いた切実なメッセージです。「1から10へ、10から100へ…」少しでも多くの人に、ずっと遠くの人にまでどうか届きますように…。


トモロウを抱きしめながら、一度も会えなかったノラ吉くんのことを思います。苦しみの中で命の灯が消えていく動物たちのことを思います。日々の中で、私の命もこうして踏み消されていくのだろうか、と思うこともあります。
けれども今では、実は私が小さなトモロウに助けられたのではないか、というような気がしています。あいかわらず何もできない私を動かしたのは、厳しい境遇にある動物たちと、保護活動をされている方々のHPの存在でした。Tさんのページからも、私は多大な影響を受け、これまでに多くの勇気をもらいました。それらすべてに感謝の気持ちでいっぱいです。そして、黒猫さんと、数々の偶然で後押ししてくれた目に見えない力に、心から感謝します。

最後の偶然…。Tさんの今は亡き素晴らしい愛猫さんも、黒猫だったのですよ。

ノラ吉くんの詳細はこちらです。

ノラ吉くん、きみのこと忘れない…

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