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私は怖くなりました。それに、その子はすでに保健所に連れて行かれてしまった後なのです。きっともう間に合わない…どうせ無駄なことなのかも…。 リセット。レスは一瞬にして消えました。パソコンを切り、布団をかぶって寝てしまおう。きっと誰かが助けてくれる、もっとしっかりした、ちゃんとした人が…。今はじめて直面する瀕死の命に、手を差し出す勇気がどうしてもありませんでした。 でもその時、もう一匹の子猫の顔が浮かびました。「こげんた」ちゃんでした。あの事件を知った後、私は心底なにか行動しなければ、という気持ちに駆られました。今の世の中のいちばん厭な部分を見せつけられるようだったからです。 何もできないけれど、いまだ何もできていないけれど、あの事件を知ることでひとつの扉が開いてしまったことをはっきりと感じました。事件を知らずに扉の前に佇む自分と、扉を開けてその向こうの現実を知った後では、私のなかで、何かが明らかに変わりました。 「安楽死」といわれる殺処分のことを知った時もそうでした。山梨の「犬捨て山」のこと、全国各地の多頭飼い崩壊現場のことを知った時もそうでした。過酷な現実を知ることで扉はひとつひとつ開かれていきます。無力な自分に変わりはないけれど、いったん事実を知ってしまった今となっては、それ以前ののんきな自分に戻ることはできません。だったら、前に進むしかないのではないか。私は掲示板の書き込みを読みました。決して忘れることも、取り消すこともできない事実として。 私は布団から跳ね起きました。だだだっと一気に返信を書いて二度読み返し、これでいいか、もう一度自分の胸にきいてみた後、送信しました。その後で、黒猫さんがメールアドレスをきちんと書かれていることに気づき、すぐメールも送りました。まるで「死なせるものか」という思いに、とりつかれてしまったようでした。どんなに遠くでも子猫を受け取りに行こうと決心していました。 でも一方で、この行動のために、また子猫が目の前で死んでしまうかもしれない、という薄氷を踏むような思いもずっとありました。そして何よりも、「黒猫」さんが見ず知らずの私を信頼してくれるかどうか、正直なところ、それがいちばん自信がありませんでした。 「決して怪しいものではありません」信じてもらいたい一心で、おバカな日記と写真が満載の、このHPのURLまでメールに記しました。ところが、あとで気がついたのですが、肝心の電話番号を記すのを、すっかり忘れていたのです。どれほど頭に血が上っていたことか、夢中のときに限って抜けてる私。怪しい…いかにも怪しい人です。 返事は来るだろうか? 私だったら、相手を信用できるだろうか? ふだん掲示板に書き込むことさえ、ほとんどない私がレスをつけ、メールまで出してしまった。ほんとにこれでよかったんだろうか…? ずっとずっと迷いながら、眠れず明け方近くまで掲示板をのぞき、メールのチェックをしました。 けれども何も起こりませんでした。 |