トモロウが末っ子になったわけ

その9 トモロウという名前

思いのほか、すんなりわが家に溶け込んだ子猫を見ながら、まだ私は迷っていました。里親を探すか、末っ子になるか…。

最初は里親を探すつもりでした。「他人を騙すより騙されるほうがマシ」というやり方でずっときた私ですが、里親詐欺が横行する現状では、そんなのんきなことを言ってられません。責任の重大さをひしひしと感じました。しかし目の治療のこともあり、もう少しわが家で様子をみようと思いました。


でも一方で5匹と6匹の違いは何だろう、とも思いました。全く猫見知りのない子なので、わが家のような大家族でも大丈夫そうに見えました。それでも3日もたたないうちに、昔からわが家の一員だったかのようになじんでしまったのには驚きました。また、ほかの子たちの子猫を受け入れる早さにもびっくりしました。まるで、こうなることを皆、知っていたかのようです。

それでもまだ迷っていたのは、あんまりかわいい子猫だったからです。うちの子が大きすぎるのかもしれませんが、子猫のまあ小さいこと! 死んじゃうんじゃないだろうか。おっかなびっくり抱っこをし、朝起きるといちばんに息をしてるか見にいきました(その心配は全く無用でいつも元気に飛び跳ねているんですけど)。そして彼が思ってもみないほど整った顔立ちだったので、すっかりどぎまぎしてしまったのです。


そんな私に、子猫をやさしくなめてあげているクルリの背中が言いました。「大丈夫なんじゃない? なんとかなるよ。手伝うよ」

いちばん最初に子猫を迎え入れ、面倒をみ、他の猫たちとの橋渡しをしてくれたクルリ。子猫が他の子たちとすっかり仲良くなると、そっと後ろで昼寝をしているクルリ。いつもはオトボケ君なのに、体の芯からやさしい子。みつよさん、こんな素敵な子に育ててくれて、ありがとう!


心は決まりました。この子はうちの末っ子です。名前は「トモロウ」。体いっぱいに太陽のような生命力があふれた子、明るくて前向きで、ほんとに「明日があるさ」という感じだからです。

振り返ると、どうしてこういうことになったのか、やはり信じられない気持ちでいっぱいです。なぜ自分にあんな行動がとれたのか。本当なら、もう今、この世にいなかったかもしれないトモロウです。保護者の黒猫さんに出会わなかったら。一度は保健所に連れていってしまったけれど、「悪あがき」だとご自分でおっしゃった掲示板の書き込みがなかったら…。

私も黒猫さんも、こんなことはまったく初めての経験でした。二人とも夢中でした。必死でした。奇跡など信じていなかったけれど、これはひとつの奇跡であったのかもしれません。


私には、いまだ果たせていない夢があります。それは動物愛護センターから殺処分の子たちを引き取ること。でも私が助けられるかもしれない命はほんの1匹かそこらです。そして、実際に足を運んで、救い出す子を選別することは、目の前のほかの子たちに「私もあなたたちを殺すことに加担します」とわざわざ宣言しにいくことと同じような気がするのでした。

でも今、トモロウはセンターで「処分」されたたくさんの命とともに私のところにやってきました。この子の後ろに、会ったこともないたくさんの、それぞれの性格や個性を持った子たちの存在を感じます。彼の後ろにいる、この子たちすべてが「トモロウ」であるのだと思います。そのことを伝えに、彼は突然、私の目の前に現れたような気がしてなりません。


たった一匹の子猫を、たまたま運よく救えたことを、ことさら吹聴したくて私はこのページを作ったのではありません。一人ひとりが関われる子たちは限られています。でももし、手の届くところにそういう子が突然現れたら、それが縁なのではないでしょうか。この瞬間にもあちこちで動物たちが死んでいくのでしょう。それをひとりで全部救うことはできません。でも、関わった子たちの後ろには、たくさんの顔があり、命がある。そうやって、一人と世界はつながっていくのではないかなど、トモロウの寝顔を見ながら、つらつら考えたりするのです。

私を励まし、決断させてくれたのは、クルリのやさしさでした。

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